ニッサン情報 第31号
グリセリン飼料「グリセナージ」 (その5)


  これまではグリセリンを単体で使用した場合の海外文献をご紹介してきましたが、グリセリンを主原料とし、ビタミンE、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム及びカルスポリン(枯草菌)を配合した「グリセナージ」についてわが社独自の試験を行いましたので概要をご報告いたします。


1. グリセナージの嗜好性試験

 グリセナージは液体飼料であり、給与方法には飼料に混和して与える方法とボトルから直接給与する2つがあります。そのそれぞれについて試験を実施しました。

1)飼料に混和して給与する方法

 まず、約2kgの濃厚飼料に250ml のグリセナージを振りかけて給与(トップドレシング)したところ、ほとんどの牛は好んで全量を摂取しました。
 これらの結果を表1にまとめました。
 表中○印は、牛が30分以内に全部食べたもの、△印は2〜3時間内で全部食べたことを示しています。これによると3農場の計10頭を用いたこの試験成績から、グリセナージに対する乳牛の嗜好性にはとくに問題はなく、給与に当たってとくに留意することはないことが明らかにされました。

表1 グリセナージの飼料混合給与試験成績(給与第1日〜6日)
農場名
牛No.
投与開始日からの日数
1
2
3
4
5
6
O農場
1
2
3
4
S農場
1
2
3
4
M農場
1
2


2)ボトルから直接給与する方法
グリセナージはグリセリンのもつ甘味のために牛は好んでこれを飲みました。


2. グリセナージ給与の効果判定試験

 この試験では、@グリセナージの給与期間は、各牛について分娩前10日から分娩後30日の間、1日1回250mlをボトルから経口的に与えました。 A給与中および給与終了後2カ月間におけるケトーシス、第四胃変位、乳房炎発生状況および個体体細胞数の推移について観察記録しました。 なお、各疾病の発生の確認は獣医師の治療を受けたものとしましたが、潜在性ケトーシスは畜主の判断、潜在性乳房炎は個体の体細胞数が50万/mlを超えたものとしました。

 3酪農場、計9頭の試験結果は表2に示したようになりました。

表2 グリセナージ給与した牛群の周産期疾病発生その他
農場名
K農場
O農場
U農場
牛No.
1
2
3
4
5
1
2
3
1
分娩時の健康
後 産 停 滞
×
ケ ト ー シ ス
第 四 胃 変 異
乳  房  炎
×

 表中の○印は良好あるいは発生なし、×印は疾病発生、△印は発生したが自然治癒 をそれぞれ示しています。
 参考:K農場では分娩牛の尿を毎日検査し、この試験以前には必要に応じてPG投与を行っていました。 また、出荷乳の体細胞数は前乳期にはやや高く300千/ml以上で推移していましたが、この試験実施後は平均100千/ml以下でありました。


まとめ:
  1. 各農場で前産次の病歴が明確に記録されている計9頭を使った約1.5ヶ月間の給与試験の結果、ケトーシス、第四胃変位は全く発生がなく、後産停滞の発生は1頭でした。 また、分娩時の健康状態は全頭とも問題がありませんでした。乳房炎は4頭の発生をみましたが、うち半分は獣医師の診療を待たずに治癒しています。
  2. グリセナージの嗜好性はこの試験結果からも良好でしたので、飼料にふりかけたり混和して与えることができます。ほとんどの牛は最初から食べ残すことはないのですが、たまに神経質な牛では数日の馴らし期間が必要な場合もありました。
  3. 今回の試験では、分娩前10日から分娩後30日の計40日間グリセナージの給与を行いました。しかし、一般的には産前・産後に陥りやすい極端なエネルギー不足を補う対策として、産前10日間、産後15〜20日間のグリセナージ給与を実行すれば十分と考えられます。

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