ニッサン情報 第30号
グリセリン飼料「グリセナージ」 (その4)
これまで3回にわたってグリセリンの乳牛飼料としての意義について述べてきたところです。 「グリセナージ」は分娩前後のエネルギー補給用飼料として位置付け、周産期事故の減少を目的といたしております。 何卒ご愛用くださいますようお願い申し上げます。
前号に引き続いて乳牛にグリセリンを給与した海外の試験報告をご紹介いたします。
ケトーシス ・ 脂肪肝治療のためのグリセリンの経口投与
J.P. GOFF & R.L. HORST
■ 要 旨
グリセリンは牛の肝臓中でブドウ糖に変換される。 グリセリンはジヒドロキシアセトン-リン酸とグリセルアルデヒド-3-リン酸を経て糖新生にいたる。このことは、典型的な糖新生前駆物質であるプロピオン酸やPGに比べて代謝経路が短いことが特長である。グリセリンをケトーシス治療の目的に使用することは、既に1960年代に示唆されているが、当時はグリセリンの価格が高いという理由で採用されなかった。最近では価格が下がってきているので乾乳牛にグリセリンを投与してその血中ブドウ糖レベルに及ぼす効果を試験することにした。
試験は3頭で構成した(内1頭はルーメンフィステル装着牛)。これらの牛にはそれぞれ1、2、3リットルのグリセリンをポンプを使って給与した。血液サンプルは投与後8時間は一定間隔ごとに、そして24時間後に同様に採取した。グリセリン給与後0.5時間後には血中ブドウ糖は処理前に比べて3頭の平均値はそれぞれ16、20、25%に増加し、その値は8時間維持した。そして24時間後には最初のブドウ糖レベルに戻った。
3リットルを給与した3頭中の2頭はグリセリンの大量投与による蹌踉や活性低下などの症状を現したが、過量給与によって発生したこれらの症状は4時間後に消失した。ルーメンpHはグリセリン投与によって影響されなかった。2頭の脂肪肝を併発している臨床型ケトーシス罹患牛(事前の2〜3日間ブドウ糖の静注処置が施された)に1リットルのグリセリンを給与したところ、2頭とも尿中のケトン体は24時間後に痕跡程度まで減少し、乳生産量が4〜6ポンド増加した。1頭は血中ブドウ糖が0.5時間後に48mg/dLから75mg/dLに増加し、5時間後には109mg/dLであった。もう1頭の牛は血中ブドウ糖が48mg/dLから74mg/dLに増加して4時間持続し、8時間後には64mg/dLであった。
グリセリンはPGよりも毒性が少ないことからケトーシス治療の新しい方策と考えられる。
■ 要 約
- グリセリンは肝臓内でブドウ糖に変換される。 PGやプロピオン酸に比べてその代謝経路が短いという特徴がある。
- グリセリンを1、2および3リットル給与した場合、血中ブドウ糖レベルは給与前に比べて16、20、25%増加し、8時間持続した。
- 臨床型ケトーシス罹患牛に1リットルのグリセリンを給与したところ尿中のケトン体は24時間後に痕跡程度に減少した。
- グリセリンはPGよりも毒性が少ないことからケトーシス治療に応用することができる。
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