ニッサン情報 第6号
乳牛の繁殖とビタミン及びミネラル関わり(2)
乳牛が健康であれば、高い繁殖率と良質な多くの牛乳を生産することができます。健康な乳牛は、分娩後早期に発情が見られ、70〜90日までに受胎が完了し、1年1産が可能となります。
牛群の健康維持のためには若干の経費を要しますが、酪農家の利益をそれ以上に増やすことができることが示されています。
予防は治療に勝ると云われる所以です。
※繁殖障害につながる産後の諸疾病※
1.ケトーシス 2.後産停滞 3.起立不能 4.乳房炎 5.肢蹄病 6.第4胃変位 7.子宮内膜炎 8.消化障害など
前号に続いてこれらの疾病と繁殖との関わりに ついて話を進めます。
3.疾病名/
起立不能
対応する有効成分名/
ビタミンD3・カルシウム
産後に起こりやすい起立不能症は産褥麻痺、乳熱として知られています。この症状の乳牛に共通して見られることは、血液中のカルシウム濃度が異常に低くなることです。起立不能の原因は、大量の牛乳生産によってカルシウムが組織から流出するためによるものなのです。
カルシウムの不足は起立不能だけではなく、全身の筋肉が弛緩して、乳牛に活力が認められず、第4胃変異の引き金になることもあるとされています。
カルシウム : 乾乳牛に対してはカルシウム給与量を1日50g(炭カル約100g)または飼料乾物量の0.5%以下に制限する必要があります。このことは、分娩後の高カルシウム要求に対して、骨貯蔵カルシウムを血中へ放出する反応を円滑に行うホルモン(PTH)の活性を高めておくために必要な手段なのです。
分娩後には、骨中のカルシウム動員だけでは不足しますから、ほかに腸管からのカルシウム吸収も並行して行えるように分娩直後には大量のリン酸カルシウムなどを給与すべきです。
血中のカルシウムは平常時には10±1mg/dLの濃度に保たれているが、分娩後には6〜7mg/dLという低Ca血症が発生することがある。このような場合バラチオイドホルモン(PTH)が骨に働いて、骨中のCaを血中に放出し、血中Caレベルの恒常性の維持に努める。一方、経口給与されたビタミンD
3は、肝臓を経て腎臓中で活性型ビタミンD
3(ホルモン型)に変化し、PTH同様骨からのCa動員を促す。
この他に、活性型ビタミンD
3は小腸に働いて分娩後経口給与されたCaを積極的に吸収し、低Ca血症を防止する役目も担っている。またPTHと活性型ビタミンD
3は、ともに腎臓に働いてCaの尿中への排出を抑止し、Ca資源の節約を指示する働きがある。
ビタミンD3 : カルシウムの項で述べましたように、乾乳中は、分娩後の高泌乳(牛乳中へのカルシウムの大量流出)に備えて骨中のカルシウムを素早く動員する機構を完備しておくことが大切です。この機構を補完する目的でビタミンD
3給与が推奨されています。
経口投与されたビタミンD
3は、肝臓及び腎臓を経由して強い活性を持つホルモン様の物質となり、PTHとともに骨からのカルシウムの動員を強力に助け、起立不能を防ぐのです。
乾乳牛に対するビタミンD
3の給与量や給与時期については諸説がありますが、分娩2週間前に1,000万IU程度の給与で起立不能を改善できると考えられます。
DCAD : 産後の起立不能を防ぐ今一つの理論として、乾乳期間中にミネラルの陰イオン、陽イオンのバランスを考える方法があります。陰イオン飼料を給与すると乳熱の発生などを低下させることが明かにされています。
一般的に利用する陰イオン塩は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどです。しかし、陰イオン飼料の嗜好性がよくないこと、またカリウムの多い粗飼料を与えた場合バランスが取りにくいことがこの普及を妨げています。
ニツサン商品の紹介
ピフロペアA&B
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給与方法
分娩2週間前 ペア1包
分娩通後 ペア1包
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前号でも紹介しましたが、ビプロペアA&Bと起立不能の関係を再度説明いたします。
本品は、産前2週間前に与えるA包と産後すぐに与えるB包が1対になっています。
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ビプロペアA1包中 |
ビプロペアB1包中 |
ビタミンA |
200万IU |
600万IU |
ビタミンD3 |
1,000万IU |
100万IU |
ビタミンE |
200mg |
1,200mg |
技術情報で述べましたように、産前には骨に蓄積されたカルシウムを素早く動員する機能を作っておくことが大切です。ビプロペアAには、この目的でビタミD
3を多量に配合しました。
ビタミンD
3が代謝されてホルモンに変わるためには給与後約10日以上を要します。この1包の給与で、産前に飼料中のカルシウムを制限しても、骨から必要な量のカルシウムを引き出すことができます。
ピプロペアBは産後に与えるもので、カルシウムは飼料中に充分含まれていますから、この時期骨からの動員を促す必要は少なく、ビタミンD
3はビプロペアAの1/10になっています。分娩後には必須ビタミンA,Eを補給して乳房炎をはじめとする諸疾病に備えることを目的としています。
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