ニッサン情報 第5号
乳牛の繁殖とビタミン及びミネラル関わり(1)
繁殖障害の最も大きな原因は、分娩後の飼料エネルギー不足によって体内の代謝関係に大きな乱れが生じ、泌乳のシステムが優先することによって繁殖力が低下することにあります。
繁殖障害は、80以上の原因があると云われていますが、泌乳初期や高泌乳牛においては、体内のすべてのホルモンが催乳の方向に向かっており、黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンが極端に抑制され、微弱発情若しくは無発情の状態が発生します。
図1泌乳中の体重、乳量、乾物摂取量の変化(NRC.1988)
図1は泌乳期間中の乳量、体重、乾物摂取量の変化を表したものであるが、体重がPの線以下にあるときは受胎する確立が低い。体重が回復に向かった時から受胎の準備が整ったと見るべきである。管理の要点は、泌乳初期に良質粗飼料を充分に給与することである。
牛乳の生産に見合うだけの飼料を給与すればよいのですが、牛側には食欲が充分でないという条件があって、この時期にはエネルギーの不足が避けられず、いろいろな代謝不全から多くの障害を発生して繁殖障害につながっていくのが実情です。エネルギーが不足することがやむを得ないとすれば、発生する障害を如何にして除いていくかを考えることが重要です。
繁殖障害牛には、種々の原因があることはすでに述べましたが、繁殖障害につながる産後の疾病名を挙げると次のようになりましょう。
※繁殖障害につながる産後の諸疾病※
1.ケトーシス 2.後産停滞 3.起立不能 4.乳房炎 5.肢蹄病 6.第4胃変位 7.子宮内膜炎 8.消化障害など
乳牛は、高泌乳というストレスによって体内の免疫力が落ち、いろいろの疾病の引き金となり、発生した疾病が又ストレスとなって繁殖率が悪くなるという循環を繰り返すことになります。
ビタミンやミネラルを栄養レベルを超えて大量に給与すると、免疫力を強めたり、特定の疾病に対する予防・治療効果があることが知られています。ビタミン、ミネラルを目的に応じて給与して疾病を防ぎ、繁殖率の改善などを図るために考えられたものが飼料添加物であります。
即ち、ビタミン、ミネラルは少量(例えばNRC標準量)給与した場合は栄養補給であり、大量給与した場合は医薬品的な効果が期待できるものなのです。
以下繁殖障害を招く疾病とビタミンの関わりについて話を進めます。
1.疾病名/
ケトーシス
対応する有効成分名/
ナイアシン
乳牛は、分娩3週間前くらいから血中ケトン体が増加の傾向を示し、分娩後2週間で最高値に達し以後漸減します。この傾向は肥満牛ほど強く現われ、分娩前のボディコンディションが大切な所以はここにあるのです。
血中ケトン体の増加は、食欲低下を招き、乳牛はますますエネルギー不足に陥ることになります。
ナイアシンはケトン体の抑制と分娩直後の体重減少を防ぐ効果があります。
ナイアシンが血中β-ハイドロオキシ酪酸を抑制する効果
測定項目 |
区分 |
分娩後(週) |
1 |
2 |
03 |
4 |
β-オキシ酪酸 (mMol/L) |
投与区 |
6.0 |
5.3 |
4.5 |
4.3 |
非投与区 |
8.5 |
10.0 |
7.0 |
5.7 |
注1 β-ハイドロオキシ酪酸はケトン体の一つである
注2 7.5mMol/L以上は治療を要するケトーシスと判断される
又ナイアシンは、分娩後の体重減少を抑える働きがり、脂肪添加よりも効果のあることが示されています。分娩後の体重低下を防ぐことは、早期発情一妊娠を!完成させることになります。
図2油脂とナイアシン添加による体重の変化
図2にみられるように、コントロール区では6週頃まで大幅な体重の減少が観察される。これに対してナイアシン給与区では4週で下げ止まり回復に向かっている。
しかも体重の減少はコントロールの半分以下(指数)となっている。油脂を給与することは、分娩後10週以降に効果がみられる。
2.疾病名/
後産停滞
対応する有効成分名/
ビタミンA,E
後産は正常に排泄されるものでも3〜8時間と比較的時間がかかり、後産が停滞すると大きな事故につながる場合があります。
ビタミンAとEの給与は、後産停滞を予防することが証明されており、分娩前のビタミンA,Eの給与は特に大切であります。
ビタミンAの血中の濃度別の後
血清中のビタミンA含量IU/dL |
後産停滞発生率% |
繁殖障害発生率% |
後産停滞発生率% |
〜83 |
22.7 |
54.6 |
4.9 |
83〜100 |
18.2 |
37.9 |
4.1 |
100〜117 |
18.2 |
27.2 |
5.8 |
117〜133 |
7.1 |
- |
4.4 |
117〜133 |
10.5 |
19.3 |
5.4 |
分娩時に血清中のビタミンA,Eレベルを高く維持するためには、分娩1週間前にビタミンAを200万単位以上を給与すべきです。
分娩場所が衝生的でない場合は、後産停滞による子宮頚管の開放は子宮内への細菌侵入→感染の機会が多くなります。この場合給与したビタミンAは子宮内で抗病的な作用を発揮することになります。
不妊のうち50%前後は子宮内膜炎が原因であると云われています。
(今月号では1と2について解説し、3〜8については次号以下に続きます)
ピフロペアA&B
乳牛は、分娩前2週間くらいから栄養素代謝のためのビタミンA消費量は急激に増加し、分娩時には血中ビタミンAレベルは欠乏寸前まで落ちこみます。また胎児の骨格形成には大量のカルシウムが必要であり、この後に続く乳生産のため、血中カルシウムレベルが落ちこんで起立不能症状が起こるとされています。
ビタミンD3は骨蓄積カルシウムを動員するためのホルモンの役割を受け持っているのです。ビプロペアA&Bは高濃度ビタミンAD3E混合添加物です。
ではどんなときに給与すればよいでしょうか?
- 分娩後起立不能が発生する恐れのあるとき
- 後産停滞の発生する恐れのあるとき
- 前回の種付けが悪かったとき
またどれくらい給与するのでしょうか?
- 分娩2週間前にビプロペアAを1袋、分娩直後にビプロペアBを1袋給与します
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